これから新しいことを始めようとする人の背中をそっと押してくれる映画「500ページの夢の束」レビュー

 

自閉症のウェンディ(ダコタ・ファニング)は、唯一の肉親である姉と離れ、サンフランシスコに近いベイエリアにある自立支援ホームに暮らしている。

曜日ごとに色の異なる手編みのセーターを着て、毎日スケジュール通りに課題をこなす日々。

スター・トレックに関することなら誰にも負けない知識を持つウェンディは、余暇の時間にはスター・トレックのオリジナル脚本を執筆している。

 

ウェンディの行動範囲は、施設と職場のシナボン(シナモンロールのチェーン店)のみ。

通勤経路から外れる通りを渡ってはいけないと厳しく言われている。

 

ある日、スター・トレックの脚本コンテストがあることを知った彼女は、締め切りに間に合わせるために、施設をこっそり抜け出し、愛犬ピートとともに映画会社のあるロサンゼルスを目指して旅に出る。

 

ウェンディのいるサンフランシスコの施設から映画会社のあるロサンゼルスまで約650km。

健常者であれば車で約5~6時間ほどの道のり。

ロードムービーとしてはかなり短い部類だ。

 

だが施設と職場の往復しかしたことがないウェンディには慣れないことばかり。

バスのチケットの買い方がわからなかったり、悪い奴に騙されたり。

見ている側もついハラハラしてしまう。

 

このドキドキ感は、初めて海外旅行に一人で行った時の不安にも似ている。

手持ちのお金で足りるか不安になったり、治安の悪い区画に入ってしまったのではないかと怯えたり。

 

様々な困難に遭遇しながらも、主人公はただ自分が書き上げた脚本を提出するためにひたすら前に突き進む。

 

主人公を演じるダコタ・ファニングは、丸襟ブラウスに手編みのセーター、ジーンズと至って平凡な格好で、ほとんどずっと硬い表情なのにとても可愛く、つい応援したくなる。

自分の思い通りにいかないと癇癪を起こすことはあるが、真面目に日課をこなし、脚本を書き上げる知性と想像力もある。

 

自閉症の症状は多様で人によってだいぶ異なるそうだが、この映画を見ると「自閉症=知能が低い」と決めつけることが間違ったことだとわかる。

 

道中、冷たい人間や悪い人間に遭遇する主人公だが、映画には良い人間もたくさん出てくる。

主人公を理解しようと努めるソーシャルワーカー(トニ・コレット)とその息子(リヴァー・アレクサンダー)、妹の行方を心配する姉(アリス・イブ)、主人公のためのmixCDを作ってくれる同僚(ロードムービーにmixCDは欠かせない!)、老人ホームのおばあさん、クリンゴン語を話す警官。

 

ネタバレになるので詳しくは書けないが、見終わった後はちょっとハッピーになり、いつもとは違う何か新しいことを始めようとする人にとっては、そっと背中を押してくれるような暖かい映画だ。

 

<作品情報>

邦題:500ページの夢の束

原題:Please Stand By

監督:ベン・リューイン

脚本:マイケル・グラムコ

出演:ダコタ・ファニング、トニ・コレット、アリス・イブ

公開年:2018年

上映時間:1時間32分

 

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